となりの専務さん
「話は戻るけど、借金のことも知ってると思う。でも、そんなの関係ないよ」

「そ、そうでしょうか……。社長はなにか言っていましたか……?」

「べつに。あの人がなにを考えているのか、俺にはよくわからないんだよ。とりあえず、俺が君と付き合ってることを伝えた時は、『へぇ』ってただひとこと」

「ひとこと……?」

「でも、葉津季が例の男の子と付き合いたがってるって話を俺の父親に話しに言った時は、あの人はとくに反対するわけでもなく、むしろあの人から葉津季のお父さんに話してくれた部分もあるみたいだし、あの人は借金がどうとかは気にしないんじゃない?」

「そ、そうでしょうか……?」

そんなことは、ない気がします。でも、専務がそう言うのなら、そう、なのかな……?



「……大丈夫大丈夫」

専務はやさしい声色で、私の頭をポンポンと叩いた。


「……はい」

そうだね。きっと大丈夫って、そう思おう。
きっと大丈夫、大丈夫ーー……。




次の日。

部署内に、少しだけピリッとした、緊張感のある空気が流れていた。

べつに、なにかトラブルが起きたわけではない。
部署内の応接室内に、社長が来ているからだ。


「部長大丈夫かな〜。緊張してたけどー」

そう口にする月野さんは、言葉の割にはどこか楽しそうだった。

社長が来ているのは、部署の来期の方策や今期の数字の確認などが理由らしいので、部長がそこまで緊張することはないとのことなのだけれど、それでも落ち着かない様子だった部長のことが、月野さんはおもしろかったらしい。


……でも、落ち着かないのは部長だけじゃない。


……私も落ち着かないんですけど‼︎

アパートのことも借金のことも……そしてなにより専務とのことを知っていらっしゃると考えると……胸がドキドキ、というよりは、正直、胃がキリキリします……。
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