となりの専務さん
「え? あ、はい。とくに用事はないですが……」

「それなら、涼太といっしょにぜひうちにおいで」

「……え⁉︎」

「またゆっくり話そう」

そう言うと、専務は私に手を振り、その場を去っていった。


家、ですか‼︎?




ーー……

「え、やだ」

その日の夜。
私は専務のお部屋におじゃました時に、今日社長に言われたことを専務に話した。
最近は、夜のこの時間もどちらかの部屋でいっしょに過ごすことが多い。


「で、でも社長がぜひって」

「知らないよ。行かなければいいだけじゃん」

「そんなわけには!」

そりゃぁ、確かに「行きます」とは答えてないけど。
でも、社長の提案なのだから、行った方がいい気がする。
それに、社長が私たちのことをどう思っているのか…….今日はちゃんと聞けてない。


そんなことを考えながら黙りこんでしまった私を見かねてか。


「……仕方ないな」

専務は、やれやれといった感じでため息をついて、でも確かに、実家に帰る意思を示してくれたように感じた。


「いっしょに行ってくれるんですよね? ありがとうございますっ」

「なに。そんなにあのオッさんに会いたいの? 会社で会えるでしょ」

「しゃ、社長に会いたいというわけでは……! でも誘っていただいたのに伺わないのも大変失礼な気がして……!」

おうちに行くのは、もちろん緊張する。
社長に改めてなんてあいさつしよう。服はなにを着ていこう。お土産はどうしよう。
そんな風にいろいろ考えながら、私がまたしても黙りこむと。


ーーちゅっ。
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