となりの専務さん
「⁉︎」

びっくりして、思わず顔を上げる。
突然、専務にキスされたから。ほっぺだけど。


「な、なななんっですか」

「帰りたくもない実家に仕方なく帰るんだから、このくらいさせてよ」

「そ、その……!」

もちろん、キスが嫌なわけじゃない。でも、不意打ちだったから驚いた。



「さて、そういえばアイス買ってあるよ。食べる?」

そう言って専務は立ち上がったけど。


「……広香?」

私は、まだドキドキしちゃって、顔がすごく熱い。
たぶん私、今すごく変な顔してる……。



「……困るよ」

専務はそう言って、私の正面に座りこんだ。


「え……?」

「せっかく、まだ手出さないように我慢してるのに、そんな顔されたら抑えがきかなくなりそうだよ」

「え? んっ……」

またしても突然、専務にキスをされた。
今度は唇に。いつもより、強くて、深い、キス。


「ん……っ、あっ」

そのままトサ、とその場に押し倒される。


「大丈夫。キス以上のことはまだしない………………つもり」

最後の『つもり』がとても小さい声だったけど。

そのあとも、専務に何度も何度もキスをされた。

……普通のキスでさえ、未だにドキドキが止まらなくなるのだから、“深い方のキス”は、本当に心臓が痛くなるほど。
でも、その痛みも息苦しさも、すべてが幸せで。


「……ん、んっ」

「……もっと舌出して」

「ふ……っ」


……私、やっぱりこの先もずっとずっと専務といっしょにいたい。住む世界がちがうかもしれないのは百も承知だけど、それでも、専務から離れたくない。

知らなかった。私って、好きになった人には意外に独占欲が強いのかもしれない。


……けど、専務も同じ気持ちだったらいいな。



……今度の土曜日、社長に気に入ってもらえるようにがんばろう。
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