となりの専務さん
約束の土曜日。


私は、目の前の大きな建築物を見上げながら、呆然と立ち尽くしていた。



「なにしてるの。早く行くよ」

「は、はい」

専務に手を引っ張られ、おそるおそる門をくぐる。


…….専務の家は、もちろん覚悟はしていたけどとても大きく……。
大きい、なんて安っぽい言葉で片づけていいのかな……。広い? 壮大? 玄関どこ? ダメだ、貧乏人のボキャブラリーからはそんな単純な言葉しか出てこない。

こんな立派なおうち、ドラマや漫画でしか見たことないな……。

専務のおうちは、洋風のお屋敷って感じで、お庭も広く、花や木々がキレイにお手入れされていた。


ただ、お庭が広いゆえに、門をくぐってから玄関までが数百メートルあった。その数百メートルという距離は、私の緊張や不安を増幅させるには十分すぎるほどの長さだった。


「ただいま」

重そうな玄関の戸を開け、専務が中に入る。
私も、「おじゃまします……っ」と言いながら、専務に続いた。


「お帰りなさいませ、ぼっちゃま」

ぼっちゃま⁉︎ ぼっちゃまってドラマや漫画だけじゃなくてほんとに使われてる言葉なの⁉︎

……と、つい驚いてしまったけど、そう言って出迎えてくれたのは、やさしそうなおばあさんだった。


「ただいま。ばあや」

ばあや……? これまた二次元でしか聞いたことのない言葉だったけど、あ、この女性は、前に専務が言っていた使用人っていう方かな? あの時に専務が言っていたみたいに、エプロンを着用していて、やさしそうなおばあさんだった。
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