となりの専務さん
「やあ、約束通り来てくれてありがとう」

部屋の奥の窓の前にいた社長が、手に持っていた本をパタンと閉じて、こっちを見てそう言ってくれた。

社長はやっぱり、専務とよく似ている。

社長の前には、木製の机とイスが置かれていた。普段、この机で本を読まれているのだろうか。


「こ、こちらこそお招きいただきましてててっ!」

先ほどよりもさらに深く、お辞儀をした。
専務はとなりで、「そんなにかしこまらなくていいのに」と呟くように言った。
それに対して社長は、
「大事なあいさつをしにきて、まったくかしこまらない君よりいいけどね」
と。
私がゆっくり頭を上げると、専務が社長を睨みつけているように見えた……。

や、やっぱり仲悪い……?


「あ、これ、よければ召しあがってください」

私は、持っていたお土産の紙袋をすっと差し出した。


すると社長は。

「ああ、丁寧にどうもありがとう。どこか適当に置いておいてくれる?」

「え、あ……」

適当に、と言われ、私は辺りを見回して困ってしまう。
すると専務が、
「いいよ」
と言って、手を差し出してくれたので、私はお土産を専務に渡した。


専務が社長に言った。

「せっかく買ってきてくれたんだから、ちゃんと自分で受け取るのが普通なんじゃないの」

専務のその言葉に対して社長は、なにも言わずにただにこにことほほえんでいるだけだった。


……私、やっぱりよく思われてないんだ。
お土産を受け取っていただけなかった今、はっきりとそれがわかった。

身分の違いはしっかりと理解して、どう思われるかは覚悟していたはずだった。
でも、社長はいい人そうだし、がんばって伝えれば専務とずっといっしょにいたいって気持ちをわかってもらえると、いつの間にか勝手に思ってしまっていたみたいだ。

自分が恥ずかしくなる。
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