となりの専務さん
社長は、目の前の椅子に腰かけ、私と専務に言った。

「誤解しないでね。べつに、石川さんのことを否定してるわけじゃないんだよ。この前の商品企画部長との面談の時にさりげなく聞いたけど、勤務態度もいたって真面目で、気配りもできて、仕事も新人にしてはがんばってるって」

「……」

「ただ、家柄とか、育ってきた環境が息子とは違いすぎるね。息子の嫁としては認められないかな」

はっきりと伝えられて、私はなにも言い返せなかった。
……本当のことだし。言われても仕方のないことだし。言われて当然のことだし……。

……だから、泣きそうになっちゃダメだよ、私……。


すると専務が口を開く。

「……もう子どもじゃないんだから、自分が付き合いたい人くらい、自分で決めるよ」

社長はそれに対して


……なにも言わない。

さっきまでと変わらず、ずっとにこにこしたままで私と専務を見るだけだ。


なにを考えているのか、やっぱりわからない。


『あんな人とずっといっしょにいたら疲れるよ』


いつだったか、専務が社長のことをそう言ってた。

あの時は、それがどういうことなのかよくわからなかったけど、今なら少し……わかってしまう気がした。

なにを考えてるのかわからなくて、そして、顔は笑ってるけど……なんか、怖い。


「……葉津季のことを話した時は、なにも言わなかったじゃないか」

専務はそれでも、社長に食いさがる。
そうか。葉津季さんが“普通の男の子”と付き合いたいという相談を社長にした時は、社長はとくに反対しなかったんだよね。まあ、その男の子の家に借金はなかっただろうけど……。
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