となりの専務さん
「はづちゃんのことは、はづちゃんの家で決めることだからね。僕がいろいろ言うことじゃないよ。もちろん、僕としては涼太とはづちゃんが結婚してくれるのが一番よかったけどね。はづちゃんがほかの人と結婚したいと言うなら、涼太にはほかの女性と結婚してもらうまでだよ。……もちろん、相応の女性とね」

「相応って言うけど、彼女だってちゃんとした子で……」

「帰りなさい」

専務の言葉は、社長が容赦なく遮った。
社長はずっと笑顔なのに、誰かの笑顔がこんなに怖いと思ったのは初めてで。


だけど。


「……また来ます!」

私が明るい声でそう言うと、社長は一瞬笑顔を崩し、驚いたような顔で私を見た。
たぶん、となりで専務も同じ表情で私を見たと思う。


でも、私の唯一の長所は、笑顔みたいだから。


「今日は、これで失礼します。でも、いつか必ず認めていただけるように、私、がんばりますので!」

そう言って深々とお辞儀をする。
社長は、またさっきまでの笑顔に戻って、なにも言わずに私を見つめるだけだった。



家を後にすると、さっか辿ってきた広いお庭を歩きながら、専務が言った。

「ごめんね。あんな父親で」

「え⁉︎ なに言ってるんですか! 私が悪いんです! 私が至らないから、専務にも嫌な思いをさせてしまって……」

本当に、申しわけなさすぎて辛い。
でも、泣かなくてよかった。泣いたら専務にももっと申しわけない。

今すぐはムリでも、いつか絶対、社長に認めてもらおう。


そんなことを考えながら歩いていたら、私の右手を握ってくれていた専務の手に、ギュッと力がこもった。
専務も、同じ気持ちかな、って思ってもいいのかな……。いいよね……。

私、いつか専務と絶対結婚したいです……。
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