となりの専務さん
「動物園?」

はい、と私は頷く。


「動物園と言っても、大きな園じゃないんですけど。少し先に、農家の方々が作った野菜などを売ってる市場があって、その近くに動物がいる小さなスペースがあるんですよ。ミニ動物園って感じですね」

「へぇ。動物園って言ったら、東京にある普通の大きな動物園くらいしかイメージないな。普通の動物園すらあんまし行ったことないし」

「ですよね! 小さい場所なので動物がたくさんいるわけではないのですが、田舎特有のいい場所だとも思うんですよ!」

それに……



「……ど、動物園って、結構、その、デ……デートスポット、って感じしませんか……?」

普段は専務が忙しくてデートはあまりできなくて。
それに対してはなんの不満もないけれど、好きな人とデートらしいデートをゆっくりしたいっていう気持ちもないことはなくて……。


けど。

「……」

「専務?」

専務は黙りこんでしまってなにも言わない。
……なんだか少し、困ったような表情に見えなくもない。


「どうしました?」

「……俺」

「はい」

「ケモノが嫌いなんだよね」

「えっ」

まさかの動物嫌い!
それは仕方ないとしても、動物の呼び方! ケモノって!


「お嫌いなら仕方ないですね……」

私は動物が好きで、いつか彼と動物園に行くのが自分の中での小さな夢でもあったから(大樹くんも動物っていうより昆虫の方が好きな人だったし)少し寂しいけれど、嫌がってるところに連れていくわけにはいかないもんね。
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