となりの専務さん
でも、そんな気持ちを顔には出さなかったつもりだったけど、専務は私のことよく見てくれてるから、気づかれちゃったみたいで。

「やっぱり行こうか」

笑顔でそう言ってくれて。


「い、いえ! 専務も楽しめるところに行きましょうよ! 私はいつでも行けますし!」

「君の行きたいところに、いっしょに行くから意味があるんじゃない? それに、君が好きなものとか好きなこととか好きな場所とか、まだまだ知らないことも多いから、もっと知りたい」

そう言って、専務は私の右手をぎゅっと握った。
暖かい。手だけじゃなくて、専務のやさしさも。

……好きな人が、自分に関心を持ってくれて、自分のことをもっと知ろうとしてくれている。それは、こんなにうれしいことなんだーー……。


どうしよう。専務がケモノ……じゃなかった、動物がお嫌いなら動物園に行くべきじゃないんだろうけど……

右手が温かくて……専務の好意に甘えたくなる。


「じゃあ、動物園でもいいですか……?」

専務は「もちろん」と答えて、私の右手を握るその手に、もう一度ぎゅっと力をこめてくれた。



ーー……

「へぇ。この奥に動物園があるの? ほんとに、思ってたのと全然違うや」

市場に到着すると、辺りを見回しながら専務が言った。
確かに、東京にはこういう場所はあまりないし、あったとしても、野菜の安売りしてる場所とか、専務は行かないよね。
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