となりの専務さん
一瞬、貧乏性が働き、ここで野菜買ってったらお得だな、と思ってしまったけど、今はデート中だし、これから東京まで帰るのに荷物になるし、さすがにやめとこう。


「動物がいるのはあっちですよ」

「うん」

市場から五分ほど歩くと、目的地である動物スペースに到着した。

動物の種類は豊富ではないけれど、馬やヤギなど、動物園に来ないとなかなか見られないような動物をゆっくり見ることができる。


「専務、なにから見ますか?……専務?」

専務を見ると、なにやら眉間にしわを寄せて、難しい顔をしていて。


「あの……?」

「なんか、ケモノ臭いね」

「え゛」

専務は、本当に嫌そうな顔で鼻をつまむ。
こ、ここまで来てそれはないでしょう‼︎


「……あ、ウ、ウサギはどうですか⁉︎ かわいいと思いますよウサギ‼︎」

「うん。でもウサギならペットショップで見ればよくない?」

「あっ、じゃあヤギですね! ヤギのコーナーでは、ヤギにニンジンをあげることができるんですよ‼︎」

「え、べつにあげたいとは思わないんだけど」

「……」

ヤバい。専務、本当にケモノ……動物嫌いなのか。
専務はやさしいから私に合わせてここに来てくれたけど、もともと思ったことはなんでも言う性格だしなぁ……! 思ったことをなんでも言ってくれるのはそれはそれでやさしさだけど!

で、でも今さらほかのところに行くってのも……。田舎すぎてバスもあんまり通ってないし、駅も遠いし、駅があったとしても電車一時間に一本だし、やっぱりこの動物園でなんとか楽しく過ごさないと……!
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