となりの専務さん
「なんで。聞かれたことにはちゃんと答えてあげないと」

「この場合、そこまでちゃんと答える必要はないです! ふんわり答えればいいんですよ!」

「ふんわりってなに」

「な、なかよくしてるとか言えばいいじゃないですか……」

「照れながら言うと余計エロいよ」

「こっ、子どもの前でそういう単語を言わないでください!」

「あ、ママー」

私と専務が変なやりとりをしている間に、女の子はお母さんを見つけたらしく、走り去っていった。


女の子が去ったあと、専務はまたダチョウに視線を戻して、つぶやくように言う。


「俺、子どもの将来に過ちがないよう、避妊やセックスについてはしっかり教育していきたいんだよね」

「それは確かに素晴らしい考えだと思いますが、よその子どもにする必要はないのでは。ましてや、あんなに小さい子に」

「確かに」

専務はハハッと、珍しく声を出して笑った。


「笑ったということは……楽しんでくれてる、と思って大丈夫ですか?」

「うん。楽しいよ。ダチョウの交尾にうろたえてる君を見てるのが一番楽しいけど」

「うっ、うろたえてるわけじゃないです! ムードがなかったからべつの場所に移動したかっただけで……!」

「ムードなんかなくていいじゃん。君といっしょにいられれば、俺はそれだけで楽しいし幸せだと思えるよ」

専務の言葉に、ドキ……と思わず胸が高鳴って。
専務は思ったことをなんでも言う。それは、ウソをつかないとも言えると思う。
それがわかってるから、余計にドキドキしてしまって。


……でもやっぱり、ダチョウの交尾の前で言われてもうれしさが減ってしまった。
なのでやはり、ムードは大事だと思います。


ということで、まだダチョウの交尾の途中ではあったけど、私たちはべつのスペースに移動した。
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