となりの専務さん
「じゃあ、せーので言ってみる? お互いのワガママ」

専務にそう言われ、私はコクンと頷いた。


そして私たちは、声を揃えて。


「「せーの、




夜までここで過ごそう」」





ーー……

私たちは市場を出て、バスに乗り、地元では少し有名な高原までやってきた。


高原と言っても、ここもいわゆるレジャースポットで、敷地内には小さなレストランや、おみやげ売り場などがあり、昼間は結構人が集まる。
今は夜だから昼間ほどは人はいないけれど、家族連れや恋人など、私たち以外にもちらほらと人の気配はある。


専務はきょろきょろと辺りを見回してから言った。

「ロープウェイなんてあるんだ。乗ってみたい」

「じゃあ乗りましょうか。この時間なら空いてるはずです」

私たちは手をつないでロープウェイ乗り場まで向かった。
二人乗りではなく、数人入れる仕様だったけど、私たち以外は誰も並んでいなかったので、二人きりで乗ることになった。

ガタンゴトン、と振動に揺られながらゆっくりと登っていく。

登りきるまでは五分くらい。
ロープウェイが出発するまでは、五分間ふたりきりでゆっくり話せるな、なんて思っていたけど、実際は、ふたりで黙ってロープウェイ内に流れるアナウンスをずっと聞いていた。
アナウンスは、景色に関する説明などがずっと流れていて、専務といっしょにそれを聞くのは、それはそれで楽しい時間だった。
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