となりの専務さん
「だけどね、君と出会った頃から、涼太の表情が若干やわらかくなったんだ。周りが気づくような変化ではなかったと思うけど、私にはわかったよ。好きな人ができたんだろうなって。
あの涼太が好きになった相手……どんな人なんだろうってずっと気になってた。だからつい、交際を始めてまだ間もない君を家に招いてしまった」

「はい」

「いい子だなと思ったよ。だけど、また昔と同じことになるんじゃないかって思った。涼太が本当に相手を好きでい続けられるのか、心配だった。だから、交際は賛成できなかった」

「もしかして……家に借金があるからとかは関係なかったんですか?」

「いや? 正直、関係なくはなかったかな。葉津季ちゃんとの結婚も、家のために、会社のためにっていう考えもちゃんとあったし、逆に、君をこの家に迎え入れるのは不安要素だらけで、賛成はしたくなかった」

「で、ですよね……」

「……涼太の本気も知りたかった。私が反対して、どう動くのか……。
でもまさか、あれからすぐに別れるとは思わなくて。別れを決めたのは君たち自身だし、私のせいだと思ったわけではなかったが……涼太の気持ちはしょせんその程度だったのか、それとも君のことが本当に大切に思っているからこその別れなのか……私にはわからなかった。
いかんせん、涼太は自分から私に自分のことを話さないからね。私の方から気づいてあげられることにも限界がある。まあ、その溝を作ってしまったのは私だけれど」

そう話す社長の顔は……専務の“お父さん”の顔だった。
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