となりの専務さん
好きに……しなさい? それは、つまり……。



でも。
社長からのお許しは出ても。


(今の専務の気持ちは……?)


恋愛は、私の気持ちだけじゃ成立しない。
社長に許していただいたことはとても大きいことだけれど、専務が私のことを想っていなければなんの意味もないことで。


……なおさら、専務の気持ちを確かめなければならなくなってきたのかもしれない。



それでも、やっぱり怖い。




ーー……

アパートに帰ると、自分の部屋でひと息つく。
結局あのあと急に仕事が立て込んで、いつもより帰ってくるのが遅くなってしまった。
しかも今日は社長と話したりして……なんだかいろいろ疲れてしまった。

専務はまだ帰ってきていないみたい。でも、もう遅い時間だし、専務もそろそろ帰ってくるかな。ここ最近は専務の帰りも通常より早めだったし。

……別れてからも、専務が帰ってきた時間とか、専務が朝出かけていく時間とか、そういうのを壁越しに感じてしまっていた。
感じないなんて、ムリだった。



……私はそっと壁に手を当てて、そのままコツンと、おでこを壁に預けた。



……近くて遠いっていうのは、思ったよりもずっと辛くて。

でも、自分で決めたこの距離を、自分で揺らがせてしまったら、私は絶対、専務に抱きついてしまっていたから。


今、専務が私のことをどう思っているかはわからない。わからないから怖い……。



でも。


『誰かのことを本気で好きになれない自分を気にしていたみたいでね』


『昔は来る者拒まずって感じで』


『あの涼太が、自分以外の誰かを、しかも別れた女の子のことを、そんな風に真剣に考えるなんてって』



……今の気持ちはどうあれ、専務は私と付き合っていた時、きっと私が思っていた以上に私のことを想ってくれていたーー……。



……それなら、やっぱり専務の今の気持ちはどうあれ……こんな私のことをそんなに好きでいてくれた専務に、今の私の気持ちを、きちんと伝えたい。

自分の気持ちに素直になることは、相手にとって迷惑なことなんかじゃないよね。
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