となりの専務さん
そんなことを考えていると、専務の部屋の玄関の戸が開く音が聞こえた。専務、帰ってきたんだ。

えぇと。今の自分の気持ちと、それから借金を完済したことを伝えにいこうって決めたのはいいけど……どのタイミングで?
今は、帰ってきたばかりだしやめた方がいいかな? じゃあ、いつ? 一時間後? いや、でも一時間経ったらもう結構な遅い時間だし……。じゃあ、明日? でも、せっかく決意したのにあまり明日に持ち越さない方が……。

うーん。どうしよう。
と、私が壁の前でいろいろ考えていると。


『……だし……それは……』


ん?
専務の部屋から、話し声?

誰か来てるのかな? まさか彼女‼︎?


……そう思ったけど、どうやら話し声じゃなくてテレビの音みたい。


でも珍しいな。専務の部屋からテレビの音が聞こえるなんて。
修理したとは言え、建物のもともの構造的に、壁は相変わらず薄くて。だから物音とかテレビの音は、となりの部屋まで聞こえやすい。
だから専務は、テレビを観る時はいつも小さい音かイヤホンか……そもそも朝と寝る前にニュース観るくらいしかテレビは使わないって、確か付き合ってた時に言ってた。別れてからも、こんな時間にテレビの音が漏れてくるなんて一度もなかった。

なに、観てるのかな? ニュース? いや、ニュースっぽくないな……。

私はつい、壁に耳を当ててテレビの音を聞こうとしてしまった。
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