となりの専務さん
私がそう言うと、専務は私の頭を引き寄せ、


「ん……」

優しく、それでいて強く、私にキスをした。



「は……」

それはだんだん深いキスに変わり、少し息苦しくなり、私は専務から唇を離した。


「あ、あの、専務……?」

「……ずっと」

「え……?」

「触れたくて触れたくて、仕方なかった」

専務はそう言うと、私のことをぎゅ……っと抱きしめた。


温かい。やさしい。懐かしい。安心する。


涙が、出そうになる。



「専、務……っ」


もう、ダメだ。



「専務……っ!」


もう、堪えきれない。



「好きです……っ!」

私も、専務のことを強く強く抱きしめ返した。


「広香……」

専務も、より強く、私のことを抱きしめてくれた。


幸せだ。

自分の気持ちを伝えることで頭がいっぱいだった。

専務が今も私のことを……なんて、そんな奇跡、絶対ありえないと思っていたから。


でも、想ってくれていた。
変わらず、私のことを。

変わらずーー……。



「ねぇ、広香」

専務のやさしくてキレイな声が耳元でささやかれる。


「は、はい……?」

「……あの日の続き、してもいい?」


……あの日の続き。
それは、つまり……。


「……嫌ならしないけど」

「い、嫌ではないです! ただ、その……」

「うん?」

「……あ、あの日は、なにも言ってくれなくて怖くなったので……、だから今日は……、


たくさん、名前を呼んでくれますか?」
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