となりの専務さん
「葉津季が、広香のためにって」

「え?」

「広香に素敵な結婚式させてやれって。知り合いからもらったらしいパンフレットくれた」

「け、けけ結婚ですか⁉︎ そ、そのヨリを戻してからまだ時間も経ってませんし、いきなり結婚だなんて!」

「まあ、それはそうだけどさ。でも、パンフレット見ながらなんとなくの予定を立てるくらい、いいでしょべつに? 葉津季がどんな感じの結婚式をやりたいとか、なんとなくでいいから知っときたい」

やさしい表情でそんな風に言われたら……うれしくてたまらなくなってしまいますよ、涼太さん。


「え……えと、じゃあ、ちょっとだけ見せてください」

私は身を乗り出し、涼太さんの見ていたパンフレットを覗きこんだ。


……でも。

「……あの、涼太さん?」

「なに?」

「豪華すぎます」

涼太さんの見ていたページは、庶民の私からしたら考えられないくらい華美なプランだった。
ページ、というより、このパンフレット自体がそういうプランばかりっぽい……。
豪華な結婚式に、もちろん憧れがないわけじゃない。
でもさすがにこの金額はない……。私の思っていた金額より0の数が多いんですけど。


「……涼太さんとお付き合いをもう一度始めてからしばらく経ちますが……金銭感覚の違いは未だ否めませんね」

まあ、仕方のない話なのかもしれないけど。
大企業の社長の息子と、つい最近まで借金の返済に必死だった私。

いっしょにいられることは、となりにいられることは、やっぱり奇跡かもしれない。


でも、それについて自分のことを卑下したりは、これからはもうしない。

自分に自信を持ちたいなら、まずは自分が自分のことをいっぱい褒めてあげないとね。

昔の私には難しかったかもしれないけど、今の私にはそれができると思う。

……となりに涼太さんがいるから。
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