となりの専務さん
結局、最初に見たあのブラウスが一番いいなと思った。
専務も、「俺もあれが一番似合うと思う」と言ってくれた。


約束通り、お会計は今日は専務にしていただいた。このお金は初任給で必ず返します。


「ありがとうございました」

お店の外に出てから、私は専務に改めてお礼を言った。


……だけど専務は、今買った洋服の入ってる袋を、私に渡してくれない。


「あの、専務……?」

私が首を傾げ、専務を見つめると。


「じゃ、次行こうか」

「え!?」

てっきりこれで終わりかと思ったのに、専務は再びどこかへ歩いていってしまう。私も急いでついていく。



次に到着したのは、さっきの洋服店から十五分ほど歩いたところにある、美容院だった。
……これまた、私のような庶民には普段なら縁がないであろう高そうな美容院だった。


専務は美容院の中へ入っていくと、戸惑ったままオロオロしていた私の腕をグイッと引っ張り、

「この子、よろしく」

と、私を店員さんに差し出した。


……はい!?



私は再びパニックに陥るけれど、店員さんは「かしこまりましたー」と言って私を連れていく。


待ってください、と言う間もなく、私は気付いたら鏡台の前で、ケープをつけられていた。



「あ、あの……?」

私の後ろで、専務と美容師さんが私の髪についてなにやら相談をしてるのが鏡越しに見える。

そして、私に視線を向けた美容師さんが、「どのくらいカットしますか?」と聞いてくる。
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