となりの専務さん
いい?と聞いている割には、専務は空いた片手で私の頭をしっかりと固定していて、私は動けない。


「あ、あ、あの……」

メ、メイクされるのが嫌ってわけじゃない……けど、やっぱり恥ずかしい‼︎
男性と手を繋いだことしかない私が、男性にメイクしてもらうなんて!


「なに? あ、もしかしてやっぱ不安?」

そう言って専務は私の頭と唇から手を離し、携帯を取り出していじり始める。じゃあ、少し前だけど俺が姉さんにメイクさせてもらった時の写真見せるよ」

そう言うと専務は私の頭と唇から手を離し、携帯を取り出していじり始める。
……私はなんとなく固まってしまい、専務のその様子を、黙って鏡越しに見ていた。



「はい、これ」

専務はそう言って、携帯を私に見せてくれる。
そこに写っていたのは。


「去年、うちの新商品のチークとリップが同時に発売された時、さっき話した姉にメイクさせてもらったんだ。俺がメイクしたの。どう、上手いでしょ?」


……ちょっと待って。



「モデルか‼︎」

つい、大きな声で叫んでしまった。

そこに写っていた専務のお姉さんは、なんか、聞いてた話からイメージしてた感じとは違う。

切れ長でまつ毛の長い瞳。高い鼻。ふっくらした形のいい唇。
なにより、肌が荒れていた、と聞いていたのに、肌は真っ白でツルツル。

専務いわく、お姉さんがお母さんにメイクしてもらった以来、お姉さんがずっと使用していた化粧水はコスメチアの商品で、これを使うことでお姉さんの肌はどんどんキレイになっていったらしい。ほんと、透き通るような肌だ。

でも、こんなにキレイなお姉さんも、昔は自分に自信がなくて家にこもりがったんだよね。そこに勇気をくれたのが、専務の……ううん、私の働いてる会社の商品なんだ。


ちなみに、お姉さんはなんとなく専務に似ている。肌のキレイさだけじゃなくて、切れ長の目の辺りが。専務の家は、きっと美形のDNAが充実してるんだろう。
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