となりの専務さん
そう言って専務は、満面の笑み……とまではいかないけど、さっきのほほえみよりももっとはっきりと笑った。

たまに見せてくれる専務の笑顔が、本当に素敵だと思う。

なかなか笑わない人だから余計にそう感じるのかな。
それか、笑顔の中に仕事への信念が見えるようになったから、よりそう思うのか。


その両方かな。



……胸がドキドキするのは、こんなにキレイにしてもらって、自分自身の気持ちが高揚してるから、だよね……?



それとも……。




「元がかわいいんだから、毎日これくらいしなきゃもったいないよ。女の子なんだし」

そう言って専務は私の頭を軽くぐりぐりと撫でながら言う。


「はい」

「明日から自信もって会社行けるね?」


その言葉に私は……



はい






答えたかった。



でも……。



「……」

無言になってしまう私に、鏡越しの専務は無表情で、でもどこか不思議そうな顔で視線を向けた。


「気になる点ある? いくらでも直すけど」

「えっ、いえそうではなく……!」

専務にしてもらったこのメイクに、なんの不満もない。感謝の気持ちでいっぱいだ。


だけど……



「メイクしてもらって、自信と勇気をいただきました。それは本当です。
でも……その勇気が……

まだ、小さくて」

小さい? と専務は私に聞き返す。


「……せっかくかわいくしていただいたので、自信を持って、この姿で月野さんたちと向き合いたいです。どーだかわいいでしょって言いたいです。
でも、そうしたいけど、そこまでする勇気が、まだ、足りなくて……。

あっ、専務が悪いわけじゃないんですっ。
私が、小心者で、ヘタレで、だからその……」
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