となりの専務さん
せっかくキレイにしていただいたのにこんなことを言うのは申しわけなくて、だんだんとしどろもどろになってしまう。


……でも、専務はそんな私を責めることなく。

「そっか」

と、むしろ小さくほほえんでくれた。



「あの、すみません。本当に、なんか……」

「いや、いいんだよ。
わからなくはないしね。
それに、さっきの『自信と勇気をもらった』って言葉はウソじゃないと思うから。少しでも前向きな気持ちになれたのなら、それはすごくうれしい」

そう言って、専務はまたまた私の頭を撫でた。頭を撫でるのが好きなんだろうか。


「でも、せっかくだからこれはあげる」

そう言って、専務はさっき見せてくれたアイシャドウを私に差し出してくれた。


「えっ! でもそんな、お金ないですし」

「お金ないのは知ってる。借金のある子からお金とろうとかしてないから。あげるって言ってるでしょ」

「そ、そんな! 今日ここまでしていただいて、そのうえそんな素敵なアイシャドウまでいただくわけには……!」

「べつに、俺もサンプルでもらっただけだし。そもそも俺が持ってても使わないし」

「そ、それはそうかもしれませんが……!」

だから、はい。と言って、専務は私の手に半ば無理やりアイシャドウのケースを収めた。


とはいえ……今まで安い化粧品しか使ってこなかったから、ちょっといい化粧品を持つと、それだけで気が引き締まるような不思議な感じもして。
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