となりの専務さん
「はい、ありがとうございます」

そうだよね。今は不安がるんじゃなくて、私がしっかりしなくちゃ。


「専務は、家を出ている間、お父さんのことが気になったりしませんか?」

話題を変えようと思ってそんな質問をすると。


「えー……だって会社で毎日会うし」

「そ、そうですよね。でも、会社で会うのとお家で会うのは違うかなとも思いまして」

「まあ確かに会社ではよそゆきの顔だしね」

「え?」

「あんな人と家で四六時中ずっといっしょにいてごらん。疲れるよ」

専務はそう言って、はぁ、とため息をついた。


……厳しい人、っていうことでしょうか?
想像したいけど、想像できるほど社長と話したことが、いやそもそも会ったことがほとんどない。最終面接の時に少し話しただけだ。入社式も、社長はずっと会場にいたわけじゃなかったし。


社長も専務と同じくらいかっこいい方だったなぁというのははっきり覚えているけど。
社長は専務のお父さんなのだから、同じくらいかっこいいのはむしろ当たり前のことなのかもしれないけど、かっこいいだけじゃなくて、見た目もすごく若く見えた。社長の年齢は私のお父さんと変わらないのだけれど。



……でも、もし私が本当に専務と結婚したら、社長が私のお義父さんということに……




「って、バカ‼︎‼︎‼︎‼︎」

私は思わず大声で叫んだ。さすがの専務をも少し驚かせてしまったようで、専務は少し目を丸くさせて、私の方を見た。


「す、すみません、なんでもないです……」


専務と結婚……したくないわけじゃないよ。それどころか、むしろ……


いやいや、専務のことはまだ好きとかじゃなくて、気になってるだけですけど‼︎



でもでも、やっぱり誰かの代わりに……なんて、そんな理由で結婚はできないです。




その後、もう一度各自アパートの周りを確認して、清掃活動は終わった。



ーー……

「朝ご飯、まだだよね? よかったらどこかいっしょに食べに行く?」

解散後、部屋に戻ろうとした私に、専務がそう声をかけてくれた。
ちなみに中野さんはすぐに自分の部屋へ帰り、大家さんは散歩に出かけた。
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