声が聞きたくて
【領収証、切りますか?】
【必要でしたら、お名前教えてください】
それを見せると
一瞬驚いた顔をしたけど
フッと笑ってくれた
「必要ない、……珍しいもんだ」
「助かったわ」
そう言って、彼はアレンジを持とうとした
ダメっ!
私は慌てて彼の手を止めた
えっ?と驚いている彼の手を
アレンジが崩れないように
下の方へと移動させる
もう片方の手も……
うん、大丈夫。
「……優しく持たないとダメなんだな」
その声はさっきまでの話し方とは
少し違い、本当に優しくて
一瞬、誰?と思うほどの温かみある声
「またな」
彼はそう言って、行ってしまった
初めてのお客さんだろうか?
知り合いじゃないのに
私は大丈夫だった
今まで、そんな人は居なかった
彼は一体なにもの?
声が出せたら、聞けることも
言いたいことも……
少しだけ、胸が痛んだ