声が聞きたくて


【領収証、切りますか?】
【必要でしたら、お名前教えてください】

それを見せると
一瞬驚いた顔をしたけど
フッと笑ってくれた


「必要ない、……珍しいもんだ」
「助かったわ」


そう言って、彼はアレンジを持とうとした


ダメっ!
私は慌てて彼の手を止めた


えっ?と驚いている彼の手を
アレンジが崩れないように
下の方へと移動させる

もう片方の手も……


うん、大丈夫。


「……優しく持たないとダメなんだな」


その声はさっきまでの話し方とは
少し違い、本当に優しくて
一瞬、誰?と思うほどの温かみある声



「またな」


彼はそう言って、行ってしまった
初めてのお客さんだろうか?
知り合いじゃないのに
私は大丈夫だった
今まで、そんな人は居なかった


彼は一体なにもの?


声が出せたら、聞けることも
言いたいことも……

少しだけ、胸が痛んだ
< 23 / 282 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop