お帰り、僕のフェアリー
結局、僕と父は、ホテルの中で夕食をとった。
京都の料亭が入っていたが、水が違うせいか、おだしが違う。
帰ったら、京都の本当に美味しい和食を食べにいこう。
僕はそう心に決めて、もくもくと目の前の料理を口に運んだ。
食事の後、父と別れて、用意された部屋へ。
……最上階の無駄に広いスイートルームだった。
見合いの日の夜にわざわざこの部屋を取った意味を想像すると、僕は背筋が寒く感じた。
何だかなあ。
すぐに眠る気になれず、ホテルのスカイラウンジへ行ってみる。
ワインリストを見せてもらうと、五大シャトーも各年度取り揃えていた。
でも今夜は、ボルドーの気分じゃないかな。
僕はブルゴーニュの中から、サン=ロマンの白を頼んだ。
ミネラルを感じさせるスッキリとした香りと味を楽しむ。
……静稀は……もう実家に帰ったのかな?
今夜はまだ東京にいるのだろうか。
返事がないので少し心配だ。
……泣いてるんだろうな。
かわいそうに。
……例えば、僕が見合い会場へ乗り込んで、静稀を奪って逃げる、とか?
静稀はそういうことを望んでたりするのかな?
笑える。
いや、静稀が望むなら、やってもいいけどさ。
でも、僕としては、正攻法でいきたい。
今更だけど、どうせ乗り込むなら静稀の家に行っておけばよかった。
最初は反対されても時間をかけて説得すりゃよかったよな。
なんでこんなことになってるんだっけ?
僕が無職だったから?
……くだらないな。
やりきれなさが、ワインをより硬質に感じさせるようだ。
一本開けても、酔うこともなく、僕はラウンジを出て、部屋に戻った。
バーカウンターのブランデーは、食指の動く銘柄ではなかった。
しかし、そのまま眠る気にもなれない。
よく考えてみたら、スーツはともかく、シャツや下着の替えもないじゃないか。
……帰る理由ができたな。
僕は、意気揚々と外出した。
タクシーで滞在してるホテルへ戻り、フロントからキーを預かる。
エレベーターで上がり、廊下を歩いてると、僕の部屋のドアに人がいる。
遠目でも見間違えるはずがない。
静稀がうつむいて、もたれていた。
「どうしたの?」
真夜中なので、声を抑えて問いかける。
静稀は、はっとして顔を上げて、僕を見た。
「あ……ご、ごめんなさい……」
そう呟いた静稀の瞳に涙が湧き上がる。
「ん?謝らなくていいよ。僕に会いたくなったんでしょ?……僕も。僕も、静稀が恋しかったよ。連絡くれないから。」
静稀に歩み寄り、ふんわりと抱きしめる。
あ~、静稀だ。
こみ上げる愛しさで僕はいっぱいになる。
京都の料亭が入っていたが、水が違うせいか、おだしが違う。
帰ったら、京都の本当に美味しい和食を食べにいこう。
僕はそう心に決めて、もくもくと目の前の料理を口に運んだ。
食事の後、父と別れて、用意された部屋へ。
……最上階の無駄に広いスイートルームだった。
見合いの日の夜にわざわざこの部屋を取った意味を想像すると、僕は背筋が寒く感じた。
何だかなあ。
すぐに眠る気になれず、ホテルのスカイラウンジへ行ってみる。
ワインリストを見せてもらうと、五大シャトーも各年度取り揃えていた。
でも今夜は、ボルドーの気分じゃないかな。
僕はブルゴーニュの中から、サン=ロマンの白を頼んだ。
ミネラルを感じさせるスッキリとした香りと味を楽しむ。
……静稀は……もう実家に帰ったのかな?
今夜はまだ東京にいるのだろうか。
返事がないので少し心配だ。
……泣いてるんだろうな。
かわいそうに。
……例えば、僕が見合い会場へ乗り込んで、静稀を奪って逃げる、とか?
静稀はそういうことを望んでたりするのかな?
笑える。
いや、静稀が望むなら、やってもいいけどさ。
でも、僕としては、正攻法でいきたい。
今更だけど、どうせ乗り込むなら静稀の家に行っておけばよかった。
最初は反対されても時間をかけて説得すりゃよかったよな。
なんでこんなことになってるんだっけ?
僕が無職だったから?
……くだらないな。
やりきれなさが、ワインをより硬質に感じさせるようだ。
一本開けても、酔うこともなく、僕はラウンジを出て、部屋に戻った。
バーカウンターのブランデーは、食指の動く銘柄ではなかった。
しかし、そのまま眠る気にもなれない。
よく考えてみたら、スーツはともかく、シャツや下着の替えもないじゃないか。
……帰る理由ができたな。
僕は、意気揚々と外出した。
タクシーで滞在してるホテルへ戻り、フロントからキーを預かる。
エレベーターで上がり、廊下を歩いてると、僕の部屋のドアに人がいる。
遠目でも見間違えるはずがない。
静稀がうつむいて、もたれていた。
「どうしたの?」
真夜中なので、声を抑えて問いかける。
静稀は、はっとして顔を上げて、僕を見た。
「あ……ご、ごめんなさい……」
そう呟いた静稀の瞳に涙が湧き上がる。
「ん?謝らなくていいよ。僕に会いたくなったんでしょ?……僕も。僕も、静稀が恋しかったよ。連絡くれないから。」
静稀に歩み寄り、ふんわりと抱きしめる。
あ~、静稀だ。
こみ上げる愛しさで僕はいっぱいになる。