お帰り、僕のフェアリー
静稀のお見合いって、ここだったのか?
……これは……神の采配だろうか。
僕は、映画か何かのように、静稀の見合いの席に飛び込んでくべきなのだろうか。
う~~~ん。
僕は、本気で悩んだ。

とりあえず、場所の確認だけしておくか。

席を立ち、静稀らしき女性の進んだ方向へ行こうとすると、父に呼び止められてしまう。
「セルジュくん、どこへ行くんだい?来てほしいんだけど。」

「あ……そう……。」
僕は出鼻をくじかれる。
まあ、いいか。
とりあえず、こっちを先に片付けるか。

僕は、父について移動した。
エレベーターで上がって、客室のほうへと進む父。
「お見合いって、レストランじゃないの?」
「……法務大臣がお会いしたいそうだ。」

え?
「お見合いじゃなくって?」

もしかして、夕べと同じ?
お相手の娘さん、来てなかったりして?
一番奥の扉の前で父は立ち止まった。
ドアの前には屈強な男性が2人。
……SP?

父は彼らに軽く会釈をして、ノックした。
「失礼します。松本です。」

「入りたまえ。」
父に促され、部屋に入る。
「愚息を連れて参りました。では、私はこれで。セルジュ、失礼のないように。」
そう言い置いて、父は部屋から出てしまう。

これは……どういう状況なんだろう。
僕は、戸惑いつつ、部屋に入っていく。
ホテルの一室だが、そこにはベッドがなく、中央に応接ソファやテーブルがセッティングされている。

「やあ。君が松本聖樹君か。まあ、かけたまえ。」
鷹揚にそう言う人物は、高橋法務大臣。

「はじめまして。お目にかかれて、光栄です。」
僕は立ったまま、とりあえずそう言って頭を下げる。

大臣は、穏やかな笑みを張り付かせているが、目が笑っていなかった。
僕の外見ではなく中を見ようとするような視線が痛い。

「昨日は、すまなかったね。」
そう言いながら、大臣が手で僕にソファを指し示す。

「……失礼します。」
夕べのことには触れずに、とりあえず、僕は座った。

黙って大臣を見つめていると、大臣がふっと表情を崩した。
「まあ、そうかたくならないでくれたまえ。家族になるんだから。」

そう言われて、僕は眉をひそめて見せる。
明らかに、反意を示した僕を大臣はじっと見つめる。
「……失礼ですが……どうして、僕なのですか?」
本当に失礼だな、と自覚しつつ、僕は尋ねた。

大臣は、肩をすくめた。
「……私も、聞きたいね。どうして、君なんだろうね。」

はあ?
大臣が、僕を指名したわけじゃないんだ。
ということは、やはり父の言っていた通り、現在、省内売れ筋物件だから?

……くだらないな。
でもそれなら、はっきり断ってもかまわないだろう。

僕は少し気が楽になった。
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