お帰り、僕のフェアリー
僕は、わけがわからないまま、それでも自分の意志を伝えた。
「何と申されましても、僕には守るべき人がいます。ぼくは彼女以外を愛することはできません。どうか、この話はなかったことにしてください。」

大臣の孫を不幸にするな、と言うなら、そもそも僕と会わさないほうがいいだろう。
そう思って僕は言ったのだが、大臣は、ソファを立ち上がって僕を見下ろした。

「時間だ。孫を待たせないでくれ。」
……強引なじーさんだ。

高橋法務大臣がスタスタと部屋を出ていくのを、僕は仕方なく追いかける。
大臣は、SPに守られながらエレベーターで降りて、夕べ父と食事した料亭へと入っていく。
仲居さんの案内で、奥の座敷に通される。

「待たせたな。婿殿をお連れしたぞ。」
「いや、それは……」
大臣の言葉に、僕は思わず声をあげる。

しかし、同時にお座敷の中からも声が上がった。
「おじいさま!」

……え?この声!
お行儀が悪いことを自覚しながらも、僕は逸る気持ちを抑えきれず、大臣の脇から座敷を覗き込んでしまった。

そこには、静稀!

艶やかな振り袖の静稀がいた。

「し……ずき。」

僕の声を聞いた静稀は、目を見開き、口を両手で押さえる。

「セルジュ……どうして……」

これは、一体……。
僕らは、ぽかーんと見つめ合う。

それじゃ、静稀が、高橋法務大臣の孫娘?
お見合いって、静稀と僕?

改めて、室内をぐるりと見回す。
高橋法務大臣、静稀、静稀の隣にたぶんお母さま、中央に外務大臣、そして下座に僕の父。
どう見ても、お見合いするのは、静稀と僕のようだ。

……そして、僕たち2人以外は、みんな微笑んでいる……確信犯?

一番茶目っ気いっぱいの外務大臣が、僕に着席を促す。
僕は、わけがわからないまま、静稀の真正面に座った。

両頬を染めた静稀はとても美しく可愛らしくて……。
「綺麗だ。」
と、開口一番に、つい言ってしまった。

ますます赤くなる静稀。

静稀のお母さまがコロコロと鈴が転がるように笑われた。
「本当に、仲良くていらっしゃるのね。静稀ちゃんは幸せね。」

「おかあさま……」
静稀が小さくなった。

「それでは、はじめさせていただきますかな。え~、本日は、お忙しいところ、ようこそおいでくださいました。私、この場をお世話させていただきます……」
外務大臣が通り一遍の自己紹介を始めた。

僕は頭の中で整理する。
つまり、静稀は高橋法務大臣の孫娘。
法務大臣の娘が静稀のお母さま、婿が静稀のお父さま……静稀、前に公務員って言ってたっけ……お仕事で欠席なのかな。

とにかく、法務大臣は、静稀と僕の仲を知ってて、縁談をまとめるつもりなんだよな?
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