お帰り、僕のフェアリー
「では、ご家族はみなさん、音楽学校の受験に反対されたのですか?」
僕は静稀と手を繋いで、お母さまにお伺いする。
「はじめは、反対しました。学校の先生にもご相談して、何とか諦めさせようとしましたが……」
お母さまは困ったように静稀を見た。
「みんなに反対されて悲しくなって、ものが食べられなくなっちゃったの。拒食症よ。ハンストじゃないわよ。」
静稀がしれっとそう言った。
どんどん痩せていく静稀に困りはてて、結局、受験を認めたそうだ。
「小さい頃からバレエは習ってたけど、声楽も演技もはじめてでしょう?何よりこんなにおとなしい子が、半年足らずのお稽古で受かるわけないと思ったんですけどねえ。」
周囲の思惑をよそに、歌劇団は静稀の素質を見抜き、静稀は見事に一発合格。
ご家族は渋々静稀を送り出したものの、数年で辞めさせる予定だったらしい。
「でも、音楽学校の文化祭で歌う娘を見て、私たちは見守ることに決めました。」
……わかります。
舞台の静稀は、本当にまばゆいほどに光り輝くから。
あれを見てしまっては、もう反対できないだろうな。
僕は何度もうなずいた。
「本当は、おじいさまが一番のファンですのよ。残念ながら、大臣を拝命してからは、東京公演を1度観るぐらいしかできなくなってしまいましたが。」
「早く引退しちゃえばいいのに。ねえ。」
……この母娘は……。
僕はおじいさまに同情したくなってしまった。
それから、僕らはホテルの写真館でいっぱい写真を撮ってもらった。
せっかく静稀が振袖を着てるのに、撮影しなきゃもったいない。
静稀は嫌がったが、お母さまと僕に懇願されて渋々被写体になってくれた。
お見合い記念に、僕とのツーショットも。
柔らかい笑顔の静稀はとても綺麗で愛らしくて。
僕らは心から幸せを満喫した。
一旦僕は独りで滞在しているホテルに帰り、チェックアウトと荷物を自宅へ送る手続きを済ませる。
着替えを済ました2人と東京駅で待ち合わせて、新幹線に乗車した。
釣書代わりに、と、お母さまが家譜を語ってくださった。
お父さまは小堀遠州の流れを汲むお武家出身で、高橋家で書生をされていたそうだ。
この高橋家はおじいさまのおじいさまが維新で立身出世され授爵までされたのだが不名誉な最期を遂げられた、らしい。
「私の母は、父を、つまりおじいさまを愛しておりましたが、成り上がりの新華族の家に逃げ込むように嫁いだことで実家に縁を切られましたのよ。」
くすくすとお母さまは笑って続ける。
「でも戦後に華族令が廃止されましたでしょ?たちまち母の実家は困窮して結局は父が助けたと聞いております。」
「お母さまも、お父さまと駆け落ちしようとしたんでしょ?昔、おばあさまに聞いたわ。」
静稀が、目を輝かせてそう言った。
僕は静稀と手を繋いで、お母さまにお伺いする。
「はじめは、反対しました。学校の先生にもご相談して、何とか諦めさせようとしましたが……」
お母さまは困ったように静稀を見た。
「みんなに反対されて悲しくなって、ものが食べられなくなっちゃったの。拒食症よ。ハンストじゃないわよ。」
静稀がしれっとそう言った。
どんどん痩せていく静稀に困りはてて、結局、受験を認めたそうだ。
「小さい頃からバレエは習ってたけど、声楽も演技もはじめてでしょう?何よりこんなにおとなしい子が、半年足らずのお稽古で受かるわけないと思ったんですけどねえ。」
周囲の思惑をよそに、歌劇団は静稀の素質を見抜き、静稀は見事に一発合格。
ご家族は渋々静稀を送り出したものの、数年で辞めさせる予定だったらしい。
「でも、音楽学校の文化祭で歌う娘を見て、私たちは見守ることに決めました。」
……わかります。
舞台の静稀は、本当にまばゆいほどに光り輝くから。
あれを見てしまっては、もう反対できないだろうな。
僕は何度もうなずいた。
「本当は、おじいさまが一番のファンですのよ。残念ながら、大臣を拝命してからは、東京公演を1度観るぐらいしかできなくなってしまいましたが。」
「早く引退しちゃえばいいのに。ねえ。」
……この母娘は……。
僕はおじいさまに同情したくなってしまった。
それから、僕らはホテルの写真館でいっぱい写真を撮ってもらった。
せっかく静稀が振袖を着てるのに、撮影しなきゃもったいない。
静稀は嫌がったが、お母さまと僕に懇願されて渋々被写体になってくれた。
お見合い記念に、僕とのツーショットも。
柔らかい笑顔の静稀はとても綺麗で愛らしくて。
僕らは心から幸せを満喫した。
一旦僕は独りで滞在しているホテルに帰り、チェックアウトと荷物を自宅へ送る手続きを済ませる。
着替えを済ました2人と東京駅で待ち合わせて、新幹線に乗車した。
釣書代わりに、と、お母さまが家譜を語ってくださった。
お父さまは小堀遠州の流れを汲むお武家出身で、高橋家で書生をされていたそうだ。
この高橋家はおじいさまのおじいさまが維新で立身出世され授爵までされたのだが不名誉な最期を遂げられた、らしい。
「私の母は、父を、つまりおじいさまを愛しておりましたが、成り上がりの新華族の家に逃げ込むように嫁いだことで実家に縁を切られましたのよ。」
くすくすとお母さまは笑って続ける。
「でも戦後に華族令が廃止されましたでしょ?たちまち母の実家は困窮して結局は父が助けたと聞いております。」
「お母さまも、お父さまと駆け落ちしようとしたんでしょ?昔、おばあさまに聞いたわ。」
静稀が、目を輝かせてそう言った。