お帰り、僕のフェアリー
お母さまは、少女のように頬を染めた。
「あら、知っていたの?ふふ。だって、父が、資産家の三男坊を婿養子に迎えようとしてたんだもの。」
お母さまの瞳がきらきらと輝きだした。
「私はね、小さい時からうちの書生のお兄さんが大好きでしたのよ。他のどんなかたでも嫌。父に何度そう申しましても取り合ってもらえなかったので、結納の日に心中するつもりで逃げましたの。」
……なんか、わかってきたぞ……静稀の逃げ癖は……筋金入りじゃないか。
「私は美しく死ぬつもりでしたが、主人は、父にも母にも警察にも事情を説明する手紙を送り、両親を説き伏せてしまいましたの。私、拍子が抜けてしまいましたわ。」
静稀、お母さまとよく似てるわ。
「主人は、高橋の家に婿養子に入ってもいいと言ってくれましたが、私が小堀の姓にこだわりましたの。小堀の家は早くにご両親も亡くなられて主人独りだったんですもの。消滅させてしまいたくなくて。」
「では、僕らは3つの家名を継ぐために、3人の子供を生みださないといけませんね。」
僕は静稀にウインクして、そう言った。
「まあ、素敵!お願いしますわ。松本さまと高橋と小堀と。静稀ちゃん、がんばってね。」
静稀は髪を掻き揚げてそっぽを向いた。
「無理!当分無理!」
「あら、現代の医学はとても進んでいるのよ。今のうちに、お二人の健康な精子と卵子を保存しておけば……」
「やめてっ!絶対いやっ!」
お母さまの言葉を遮る静稀の顔は火を噴いたように真っ赤で、僕はつい笑ってしまった。
静稀も、お母さまも、本当にかわいらしくて。
一生この人たちを守って生きていきたい、と、僕は本気でそう思った。
……今まで以上に大変かもしれないけど。
ああ、でも、何となくわかったよ。
「おじいさまは、おばあさまやお母さまで懲りてらっしゃるから、今回、静稀が何かしでかさないうちに僕らをまとめてしまわれようとしたんですね。」
僕がそう尋ねると、お母さまは微笑まれた。
「それもあるでしょうけどね、私たちはもう何年も前からあなたがたを応援してましたのよ。」
そうなんですか?
「いつから?」
静稀がちょっと不満そうに尋ねる。
「初舞台公演の……何日めだったかしら?いつも私達が座るお席にお友達と一緒にいらっしゃったでしょ?あれからずっと。」
僕は、苦笑した。
思い起こせば、あの時一緒に行った義人に、そんなこと言われなかったっけ?
「次の公演の時にもお見かけしたから、これはもうお付き合いしてるに違いない、と思いましてね、ごめんなさい、セルジュさんの身元も調べさせていただきましたのよ。」
やっぱり。
「静稀が二十歳(はたち)になるお正月に、振袖を送ってきてくださいましたよね?あの時に、ちゃんとご存知なんだなと確信しました。」
僕がそう言うと、お母さまはにっこりほほえまれた。
「あら、知っていたの?ふふ。だって、父が、資産家の三男坊を婿養子に迎えようとしてたんだもの。」
お母さまの瞳がきらきらと輝きだした。
「私はね、小さい時からうちの書生のお兄さんが大好きでしたのよ。他のどんなかたでも嫌。父に何度そう申しましても取り合ってもらえなかったので、結納の日に心中するつもりで逃げましたの。」
……なんか、わかってきたぞ……静稀の逃げ癖は……筋金入りじゃないか。
「私は美しく死ぬつもりでしたが、主人は、父にも母にも警察にも事情を説明する手紙を送り、両親を説き伏せてしまいましたの。私、拍子が抜けてしまいましたわ。」
静稀、お母さまとよく似てるわ。
「主人は、高橋の家に婿養子に入ってもいいと言ってくれましたが、私が小堀の姓にこだわりましたの。小堀の家は早くにご両親も亡くなられて主人独りだったんですもの。消滅させてしまいたくなくて。」
「では、僕らは3つの家名を継ぐために、3人の子供を生みださないといけませんね。」
僕は静稀にウインクして、そう言った。
「まあ、素敵!お願いしますわ。松本さまと高橋と小堀と。静稀ちゃん、がんばってね。」
静稀は髪を掻き揚げてそっぽを向いた。
「無理!当分無理!」
「あら、現代の医学はとても進んでいるのよ。今のうちに、お二人の健康な精子と卵子を保存しておけば……」
「やめてっ!絶対いやっ!」
お母さまの言葉を遮る静稀の顔は火を噴いたように真っ赤で、僕はつい笑ってしまった。
静稀も、お母さまも、本当にかわいらしくて。
一生この人たちを守って生きていきたい、と、僕は本気でそう思った。
……今まで以上に大変かもしれないけど。
ああ、でも、何となくわかったよ。
「おじいさまは、おばあさまやお母さまで懲りてらっしゃるから、今回、静稀が何かしでかさないうちに僕らをまとめてしまわれようとしたんですね。」
僕がそう尋ねると、お母さまは微笑まれた。
「それもあるでしょうけどね、私たちはもう何年も前からあなたがたを応援してましたのよ。」
そうなんですか?
「いつから?」
静稀がちょっと不満そうに尋ねる。
「初舞台公演の……何日めだったかしら?いつも私達が座るお席にお友達と一緒にいらっしゃったでしょ?あれからずっと。」
僕は、苦笑した。
思い起こせば、あの時一緒に行った義人に、そんなこと言われなかったっけ?
「次の公演の時にもお見かけしたから、これはもうお付き合いしてるに違いない、と思いましてね、ごめんなさい、セルジュさんの身元も調べさせていただきましたのよ。」
やっぱり。
「静稀が二十歳(はたち)になるお正月に、振袖を送ってきてくださいましたよね?あの時に、ちゃんとご存知なんだなと確信しました。」
僕がそう言うと、お母さまはにっこりほほえまれた。