お帰り、僕のフェアリー
20時過ぎに、静稀のお父さまが帰ってらした。
……僕が来るということで、お仕事を切り上げて帰宅してくださったそうだ。
ひろさんの豪華な手料理を真ん中に、僕はお父さまにご挨拶する。
「はじめまして、松本聖樹と申します。静稀さんとお付き合いさせていただいております。ご挨拶が遅れて、申し訳ありませんでした。」
お父さまは、黙って僕を見て、おもむろに口を開いた。
「はじめまして、静稀の父です。わざわざ私に会いにきてくださったそうですね。」
おじいさまとはまた違う怖さを感じた。
いかにも、できる人!だ。
「静稀は……ちょっと綺麗なだけの、中卒の、何もできない子です。いつまでたってもしっかりしないし、甘えて泣けば全て許されると思ってる、わがままな子供です。それでも、あなたは、この子の一生を背負えますか?」
お父さまは、単刀直入だった。
空気が痛いほどピリピリと張り詰めている。
しかし僕は、横で盛大にふくれている静稀に目を向けると、自然と頬が緩むのを感じた。
愛しいと思う気持ちに、何の嘘いつわりもない。
「お父さまに、誓います。静稀が、お母さまのように、いつも笑顔でいられるよう、僕はこの一生を捧げます。」
僕の言葉は、お父さまには、大仰に取られたかもしれない。
でも、本音なので、僕は衒(てら)いなく言い切った。
女性陣が悶えているのは気になったけど、今はお父さまにわかっていただくことが最優先。
僕は、じっとお父さまを見つめて、言葉を待った。
「……なるほど、君は静稀の男役の手本のようだね。」
お父さまは、そう言って、表情をゆるめた。
「普通はなかなか言えないことを、よくまあ……」
そこまで言って、お父さまは、笑い出した。
「まあ、あなた、失礼ですわ。セルジュさんはいたって真面目ですのに。」
お母さまがお父さまを窘める。
お父さまは、お母さまの手に自分の手を重ねて、優しくうなずいた。
「わかってるよ。ちゃんと伝わってきたから。安心しなさい。長年付き合ってる静稀が、下品にもならず、幸せそうに舞台で気障(きざ)れてるんだ、悪い男なわけなかろう。」
そして今度は僕を見て、からかうように言われた。
「できれば、今の台詞は、片膝をついて騎士のように言ってほしかったな。」
「あ!はいはーい!こうでしょ?こう!」
ポカーンとする僕を置いてきぼりにして、静稀が自分の席から飛び出してきて、お父さまの横に右膝をついて座り、右手を左胸にあてて、うやうやしく礼をした。
「そうそう!それ!かっこいいわ!」
お母さまが歓声をあげる。
「形だけじゃない。セルジュくんには、情熱と高潔な魂を感じたよ。静稀はもっと勉強しないと。」
お父さまにそう言われて、静稀は苦々しく笑った。
……家族、仲良しなんだなあ。
厳しそうに感じたのは、お父さまの外向けのお顔で、やっぱりお母さまにも静稀にも甘いんだ。
僕は、三人とひろさんのはしゃぎっぷりに、ようやく少し緊張を解いた。
……僕が来るということで、お仕事を切り上げて帰宅してくださったそうだ。
ひろさんの豪華な手料理を真ん中に、僕はお父さまにご挨拶する。
「はじめまして、松本聖樹と申します。静稀さんとお付き合いさせていただいております。ご挨拶が遅れて、申し訳ありませんでした。」
お父さまは、黙って僕を見て、おもむろに口を開いた。
「はじめまして、静稀の父です。わざわざ私に会いにきてくださったそうですね。」
おじいさまとはまた違う怖さを感じた。
いかにも、できる人!だ。
「静稀は……ちょっと綺麗なだけの、中卒の、何もできない子です。いつまでたってもしっかりしないし、甘えて泣けば全て許されると思ってる、わがままな子供です。それでも、あなたは、この子の一生を背負えますか?」
お父さまは、単刀直入だった。
空気が痛いほどピリピリと張り詰めている。
しかし僕は、横で盛大にふくれている静稀に目を向けると、自然と頬が緩むのを感じた。
愛しいと思う気持ちに、何の嘘いつわりもない。
「お父さまに、誓います。静稀が、お母さまのように、いつも笑顔でいられるよう、僕はこの一生を捧げます。」
僕の言葉は、お父さまには、大仰に取られたかもしれない。
でも、本音なので、僕は衒(てら)いなく言い切った。
女性陣が悶えているのは気になったけど、今はお父さまにわかっていただくことが最優先。
僕は、じっとお父さまを見つめて、言葉を待った。
「……なるほど、君は静稀の男役の手本のようだね。」
お父さまは、そう言って、表情をゆるめた。
「普通はなかなか言えないことを、よくまあ……」
そこまで言って、お父さまは、笑い出した。
「まあ、あなた、失礼ですわ。セルジュさんはいたって真面目ですのに。」
お母さまがお父さまを窘める。
お父さまは、お母さまの手に自分の手を重ねて、優しくうなずいた。
「わかってるよ。ちゃんと伝わってきたから。安心しなさい。長年付き合ってる静稀が、下品にもならず、幸せそうに舞台で気障(きざ)れてるんだ、悪い男なわけなかろう。」
そして今度は僕を見て、からかうように言われた。
「できれば、今の台詞は、片膝をついて騎士のように言ってほしかったな。」
「あ!はいはーい!こうでしょ?こう!」
ポカーンとする僕を置いてきぼりにして、静稀が自分の席から飛び出してきて、お父さまの横に右膝をついて座り、右手を左胸にあてて、うやうやしく礼をした。
「そうそう!それ!かっこいいわ!」
お母さまが歓声をあげる。
「形だけじゃない。セルジュくんには、情熱と高潔な魂を感じたよ。静稀はもっと勉強しないと。」
お父さまにそう言われて、静稀は苦々しく笑った。
……家族、仲良しなんだなあ。
厳しそうに感じたのは、お父さまの外向けのお顔で、やっぱりお母さまにも静稀にも甘いんだ。
僕は、三人とひろさんのはしゃぎっぷりに、ようやく少し緊張を解いた。