小悪魔な彼の想定外な甘い策略
「いやー、でも俺、人が腰抜けるとこ、リアルで初めて見ました!へろへろへろ、ってなるんですね、本当に」

それ、さっきも言ってましたけど。愉快そうに笑う梶山君。
くちゃ、となった笑顔はとても幼く見えて、可愛らしい。


「だってさ、泥棒かと思うと……」


「ほんっと怖がりですよね、すみれ先生」


普段は言わない『先生』呼ばわりをして、輪をかけてバカにしてくる梶山君。
たった今、可愛らしいと思ったことは取り消したいくらい憎たらしい。


て、いうか。

私もいい大人だし、職場でそんな、怖がり要素出してないはずなんだけど。

あーあ。
明日から『ババアの癖に、怖がり』的な事でいじられたら地味にキツい。


そう、私は本当に怖がりなんだ。
だから、職場から駅までの道も、結構暗いの本気で怖くて、だからこそあの日、蓮田さんと出逢ったシーンが、印象的っていうか、何て言うか……
思考が大分違う方へ逸れ始めたところで、あ、と気付く。
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