生神さまっ!
裕也の声と共に、立ち去る4人。




俺はそっと、安堵の息を吐いた。





「…大丈夫?夏樹…」



「うん、別に大丈夫」



「ちょっと、無理しないの!

…私の前では、表情…作らないでよ」




香織がよく言う、その言葉。

じゃあお言葉に甘えて、ということで。



俺は今日1番強く蹴られた腰を抑え、唇を噛む。

…裕也の蹴りは、ほんっと痛い。やめてほしい。




「…良かった」



「いや、良くねえよ…俺、結構腰いてーんだから…」



「うふふ、そーゆーことじゃないの!」



「…どうゆうことだよ」



「ひっみつー!

ほら、帰ろ帰ろ!!私たちの家に!」




…香織は俺と同じ孤児院ぐらし。

ただ違うのは、香織の場合、3歳からやって来たということ。
両親が離婚し、父方についた香織…ただ父は、香織が3歳になる直前、病気で亡くなってしまったらしい。

祖母と祖父はすでに他界。他、親戚もいたはいたが、2つの家ぐらいしかなかった。
どっちも子供が3人おり、大変だから無理だということで、孤児院に連れて来られた。



だからか香織は"捨てられた子"とは思われないらしく、クラスでも普通…いや、むしろ人気者な方だ。


勉強も運動もある程度でき、性格もよく、顔も結構可愛い。


彼女の長い黒髪は周りの女子も憧れているらしい。



そして…裕也は香織のことが好きだ、という噂がある。

俺と香織は簡単に言えば幼馴染のようなもので、深く言ってしまえば家族のようなものだ。


そんな間柄の俺に嫉妬した、というのも、俺がアイツらから色々やられている原因の1つだ。



< 224 / 686 >

この作品をシェア

pagetop