腹黒司書の甘い誘惑
いつも通り館内をうろうろして、適当に本棚を眺めているときだった。

「どういった本を探しているんですか?」

後ろから急に声をかけられて、わたしの体がびくっと飛び上がる。
振り向くと柊也さんが立っていて、彼はわたしと目が合うと穏やかに微笑んだ。

わたしは目を丸くして固まっている。だって、まさか声をかけられるとは思わなくて。
とくに何か本を探しに来ていたわけではない。でも上手く答えないと、と頭だけ焦っていて声は思うように出ていかない。

「歴史ですか?」

おどおどしていると、柊也さんがわたしの隣に立って本棚を見上げて言った。
先程まで見ていたその本棚には、日本の歴史についての本が並んでいた。

「ええっと」

正直、ここに並んでいた本が歴史のものだったと今気づいた。
誤魔化すのは簡単だったけれど、今物凄く鳴っている自分の胸の音を聞いて、頬の火照りを感じていると、気持ちが溢れてきて。

「気になってて……」

わたしは彼にちらちらと視線を送る。
なんとなく言ってしまった。恥ずかしい。
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