腹黒司書の甘い誘惑
気恥ずかしいためらいまでも知られてしまったわたしは、俯いて自分の膝を見ていた。

そうしたらすっと頬を撫でられて、驚いたわたしが顔を上げると、唇に軽く温もりがついた。

離れたあと「へ?」と間抜けな表情になっているわたしを見る柊也さんは、いたずらに笑う。

「遠慮なく言っていいよ。君が恋人としてどんな風に俺に甘えてくるのか楽しみだし。俺も欲しいときは遠慮なく言うよ」

その言葉に胸がどきんと鳴った。
唇の端を上げた柊也さんは意地悪な感じたっぷりなのに、何故かとても惹かれてしまう。

信号が青に変わって、柊也さんは目尻で視線を残すようにわたしを見てから前を向いた。

何か魔力でもありそうな色気のある表情に、わたしは頬を熱くさせたままぼうっとして動けなかった。

その余裕、ずるいと思う。
結局予定は? デートの約束はしてくれるの?
なら、それはいつ?

気になって柊也さんの横顔をちらちら見る。
言葉を発するような気配はない。

窓の外の景色が、どんどんわたしのマンションに近づいている。

もうなんなのっ! と心の中でむくれていたら、余裕たっぷりの声が車内に響いた。

「週末、予定あけといて」
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