腹黒司書の甘い誘惑
その言葉に胸が高鳴ったと同時に、車がマンションの前でとまった。

わたしが柊也さんの横顔を、時が止まったかのように見つめていると、彼は顔をこちらに向けて意地悪に笑った。

「マヌケ面」

「なっ……だって、いきなり言うから!」

「いきなりじゃないだろ。さっき君が『二人きりの時間が欲しい』って言ったんじゃないか」

「それは、言いましたけど」

「俺も欲しいから、だから週末を一緒に過ごさないかと君を誘ってるんだ。まったく、君は本当にぼけっとしてる」

「ち、違います、ぼけっとしていません! 柊也さんが変な間を作るからっ……」

「俺の所為にしないでくれる? 噛むよ」

「噛っ……!?」

噛むってなに!? と動揺した瞬間にはもう、柊也さんの腕がわたしに伸びてきていて、肩を抱かれたと思ったら唇を塞がれた。

しっとりと絡む舌に翻弄されて、体の力が抜けていく。
熱っぽくとろん、としたわたしをからかうように唇を甘噛みされた。

まったく痛くないけれど、本当に噛まれた……! と衝撃を受けていると、柊也さんはわたしの唇を見つめてから視線を合わせて囁いた。

「おやすみ」

もう本当、彼の魅力にわたしはたじたじだ。

恋人になってから益々その魅力を知って、はまっていく。

ため息しかでない。

「……週末、空けておきますから」

むくれながら言うと、柊也さんはふっと笑って頷いた。

それを確認したわたしは、キスの余韻で熱っぽい体を動かし、車を降りた。

去っていく車。
その後ろ姿を見つめながら、焦がれる想いでいっぱいになった。
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