腹黒司書の甘い誘惑
ふっと笑った柊也さんの顔を見て、泣きそうになった。

純粋に彼のことが気になっていた。一目惚れというやつ。あの日、はじめて彼のことを見てとてもかっこいい人だなって思って、彼のことを色々知りたいと思ったからここに通っていた。

こうして毎日来ていれば何かきっかけができて、仲良くなるチャンスがあるかもしれないと。
そう思っていたのに。

鬱陶しいと言ったくせに、遊びでならとか……信じられない……。
こんな人だとは思わなかった。
優しくて穏やかな人だと思っていた。

そして羞恥心。
数分前まで彼を見てぽうっとなっていた自分が馬鹿みたいで恥ずかしい。

「っ……退いてください!」

わたしは柊也さんを押しのけて、駆けだした。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。嘘でしょう。

走って館内から飛び出したわたしは、はぁ、はぁ、と苦しい息を吐きだしながら通路で止まった。

「っ……」

“鬱陶しい”と言った彼の声を思い出して涙が出た。なにより、相手が第一印象とはまったく違う性格をしていたことが本当にショックだった。
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