腹黒司書の甘い誘惑
「自販機で飲み物を買っているとき、図書館の方へ向かう理乃ちゃんを何回か見ているのよ。今日も行っていたんでしょう?」

美鈴さんは唇の端を上げてこちらを見てくる。
昨日までのわたしならきっと頬を赤くして頷いたかもしれないけれど、今はそういう感じになるわけがない。

「あの司書さんって、かなり性悪な人なんですね」

美鈴さんの問いかけには答えず、わたしはそう言って眉に力を入れた。
強がらないと泣いてしまうかもしれない。
予想していた反応とは違ったのだろう。目をぱちぱちとさせてから美鈴さんは首を傾げた。

「柊也くんが性悪?」

「はい」

「なに言ってるのよ。柊也くんは紳士的で良い人じゃない」

先程の出来事を頭に浮かべて怒りとショックをぶり返したわたしは、あの人のどこが紳士的で良い人なんですか! と、大きな声を出しそうになったけれど、はっと気づいた。

この前、豊子さんも美鈴さんも彼のことを良く言っていた。
優しいとか、気が利くとか、いい人だとか。

もしかして普段は性悪な部分を隠しているのかもしれない。
あの柊也さんを知っていたら良い人だなんて言わないはずだ。
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