腹黒司書の甘い誘惑
前回と同じように台車に本の入った段ボールをのせて事務室を出た。

ガラガラと廊下を進みながら溜め息。
絶対に気まずい。わたしの足取りは重かった。

図書館の前にたどり着き、大きく深呼吸。

平然と、何ともないフリをしよう。あんなのはもう気にしていないのだから。

台車の取っ手を握る力を強めて中へ入っていった。

「おはようございます」

わたしはカウンターに座って本を読んでいる司書、柊也さんに挨拶をした。すると彼はちらりとこちらを見て、唇の端を上げた。

それがなんだか小馬鹿にしている視線のように感じて、わたしはムッとしながら本を近くのテーブルの脇に下ろした。

だめだめ、平常心よ、平常心。

「本、ここに置いておきますね」

「どうも」

人が動く気配がしてカウンターの方を見ると、彼が立ち上がってこちらにやってきた。

「本を頼めば君がここに運んでくれるだろうと思ったんだ」

どきん、と胸が鳴った。
どういう意味でそんなことを言っているのだろうか。わたしは柊也さんを見つめて固まる。
彼は口許を緩めた。
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