腹黒司書の甘い誘惑
どんな意味でも関わらないほうがいい。そう思った。

「失礼します」

眉に力を入れたわたしは台車を押して歩き出したけれど、柊也さんが行く道を塞いできた。

わたしは顔を上げて彼をにらみつける。そうしたらふっと笑われた。

相手の態度が腹立たしい。

「なんなんですか?」

「君の態度が気に入らないから」

「退いてください」

「顰めっ面して。この間俺が言ったこと、ショックだった?」

「っ……、別に!」

「嘘がヘタだな」

相手はくすくす笑いながらわたしを見てくる。
なんなの、この人。

わたしを鬱陶しいと言ったくせに、どうして関わろうとしてくるのか。

彼の声と余裕のある表情に、胸が変に鳴り出してしまう。

わたしもどうかしている。性格が最悪な人だと知って傷ついたのにどうして。

唇に力を入れたわたしは柊也さんから目をそらした。

響く鼓動が信じられない。自分がどきどきしていると思ったら、悔しくて恥ずかしくて。

「もう話しかけないでくださいっ」

「なんで? 仕事だろ?」

「関係ない話はしないで!」

「愛想も人付き合いで必要だと思うけどな」

「思いません。これはただわたしをからかっているだけじゃないですか」

そうだ。これはからかわれているんだ。本当に最悪。
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