腹黒司書の甘い誘惑
「そうかしら? ああでも、雰囲気は独特な人だとは思うけど……」

豊子さんは視線を手元に戻し、書類を作りながらそう言った。

「あれはモテる男の余裕よ。穏やかで気が利いて、どんな人にも丁寧な態度だもの」

美鈴さんも仕事をしながら言う。

実は違うんです、と言いたくなったわたしが口を開きかけたとき。豊子さんが手をとめ、感心した表情で口を開いた。

「理事長も若いのにこの学園を継いで経営なさってるし、ご兄弟そろってしっかりしているわよねえ」

「……え? 兄弟?」

わたしは豊子さんの言葉を聞き返す。
いま、兄弟と聞こえたのだけど。
豊子さんがわたしに視線を向けた。

「あら、理乃ちゃんに言っていなかったっけ。柊也くんのフルネームは滝城柊也。理事長の滝城琉真さんの八歳下の弟なのよ」

「……えっ!?」

わたしは豊子さんの言葉に唖然として固まった。
兄弟……理事長とあの柊也さんが……。

でもそういえば、誰かに似ているなと思った時があった。

穏やかな雰囲気のときの目元は確かに理事長と似ているかもしれない。

滝城柊也……理事長の弟……。
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