腹黒司書の甘い誘惑
穏やかで優しい理事長と、本当は冷たく笑う柊也さんが頭に浮かぶと、兄弟だなんてやはり信じられないと思ってしまう。

「でもどうして司書なんだろう。もっと滝城学園の中心的な仕事をしてもいいわよね。あんなに立派な図書館でも利用する生徒は少ないし、卒業アルバムにも顔だしを拒否しているんでしょう? だから生徒もあんな美形がいるなんて気づかないし」

少し笑って首を傾げる美鈴さんに、豊子さんが頷いた。

「そうよねえ、不思議よねえ。柊也くんは『本が好きだから司書をやっているんです』って言っていたけど」

わたしは二人の会話をぼうっと聞いていた。
理事長の弟なら、際どい文句のようなことはここでは言えないなと。
心の中で溜め息を吐いた。

二人が柊也さんのことを良い人だと思っているから、わたしも適当に相づちを打つしかなく。


「また図書館宛に荷物が……」

週明けの午後。外で荷物を受け取ったわたしは事務室に入って豊子さんと美鈴さんを見た。

二人はデータの入力作業をしていて、忙しそうだった。

豊子さんはわたしが持っている白い紙袋に包まれた荷物を見て首を傾げる。

「本?」

「はい、たぶん……数冊入っているみたいで……」

「今年はよく本を頼むわね、柊也くん」

豊子さんが笑ったからわたしもなんとか口角を上げて見せる。
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