腹黒司書の甘い誘惑
だけど豊子さんは彼の本性を知らないからおかしいとは思わないし、豊子さんにとってはこれが柊也さんなのだ。

そういえば、わたしが最初に話をしたときも彼はこういう感じだった。

わたしは心の中でため息。

「本立てなら届いてるわよ。後で理乃ちゃんが手伝いに行くときに持っていってもらおうと思ってたんだけど」

「ああ……今日はお手伝い大丈夫です。ちょっと他のことに集中しなくてはいけなくて。また来週、お願いしてもいいですか」

猫かぶり腹黒柊也さんはすっと、豊子さんからわたしに視線を移した。

穏やかに目を細めるその仕草は、優しいようで冷淡だとわたしは感じる。

「……わかりました」

手伝いはいいと言われどこかがっかりしている自分がいて、もやっとした。

わたしは彼に背を向け、近くにあった段ボールを持ち上げる。

「豊子さん、本立てはこれですか?」

「そうそう、それよ」

確認したわたしは段ボールを柊也さんに渡した。

「どうぞ」

「ありがとうございます」
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