腹黒司書の甘い誘惑
最後まで人柄の良さそうな柊也さんは、わたしに笑顔を作って見せた。

見事なお面だなあ、とある意味感心してしまう。

「それでは失礼します」

豊子さんにもやわらかに微笑んだ柊也さんが帰っていく姿をしばらく見つめたあと、ドアを閉めてデスクに戻る。

他にやることって一体何なんだろう。
本の整理や修復以外のこと、だよね。

別に手伝いを断らなくても、カウンターとかで一人でやっていればいいのに。

やはりもやもやしていた。

デスクの上にある用具の書類に気づいて考える。

これは……図書館に行く理由が作れてしまうのだけど。

わたしは深く息を吐き出して書類を見つめていた――


夕方。

わたしは図書館へと向かっていた。

理由は、用具の書類にある受け取り欄にサインをもらうため。

昼間はもらい忘れてしまった。

お金が掛かったものについての書類に記入漏れなどがあったりすると、年度末に見返したときに困る。

図書館に向かう理由は正当なもの。

だけど心の中では、柊也さんが気になるから姿を見たいというのがある。
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