腹黒司書の甘い誘惑
図書館の独特な雰囲気を感じながら、わたしは本棚の間をきょろきょろと視線を動かして司書さんを探した。
しかし、人の気配はない。
ぐるりと館内を一周して戻ってきたわたしは、台車の前でひとつ息を吐いて本に視線を向けた。

いないみたい。入り口だし、ここに本を置いておけば気づいてもらえるかな。しばらくたってから確認しにこよう。

そう考えていたとき、外の通路から足音が聞こえた。段々その音ははっきりとしてくる。

もしかして司書さんかな。
わたしは顔を扉の方へ向けた。そして、現れた人を見た瞬間固まった。

「あれ……?」

扉を開けて入ってきた男性。
入り口のそばにいたわたしを見たその人は、首を傾げる。

一言で表すと美形。
長めの黒髪と、切れ長の二重の瞳。
通った鼻筋と、形の良い唇。
長い手足が着ているのは黒いボトムスにワイシャツとベスト。トータルして凄く品のある感じがした。

わたしは男の人をまじまじと見つめて、はっと我に返った。
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