腹黒司書の甘い誘惑
「し、司書さんですか?」
「はい、そうです」
「あ、あの、本が届いたので持ってきました」
焦りながらそう言うと、相手は穏やかに微笑んだ。それが――知っている人に似ている――気がするような、しないような。
「ありがとうございました。とても助かります」
男性は柔らかな目元を本に向け、こちらに近づいてきた。
美鈴さんが言っていた通り、かっこいい人だった。
男性は屈んで本を確認し始める。
わたしはぼうっとそれを見つめていた。
「どうかしましたか?」
ぼんやりと立っているわたしに気づいた男性がわたしを見上げるようにして首を傾げる。
どきん、と胸が鳴った。
「えっ、あっ、いいえ。では、わたしはこれで失礼します……!」
わたしは慌てて頭を下げると、急いで館内から出ていった。
あまりにも鼓動が速くなりすぎて堪えられないと思ったから。熱い、頬が。男性を見てこんな風になったの、久しぶりだ。
早歩きで進んでいき、屋根付きの通路の途中で立ち止まって図書館の方を振り返った。
柊也さん、だっけ。すごくかっこいい人だったな……。
わたしは騒ぐ胸に左手を持っていき、ぎゅっと握った。
「はい、そうです」
「あ、あの、本が届いたので持ってきました」
焦りながらそう言うと、相手は穏やかに微笑んだ。それが――知っている人に似ている――気がするような、しないような。
「ありがとうございました。とても助かります」
男性は柔らかな目元を本に向け、こちらに近づいてきた。
美鈴さんが言っていた通り、かっこいい人だった。
男性は屈んで本を確認し始める。
わたしはぼうっとそれを見つめていた。
「どうかしましたか?」
ぼんやりと立っているわたしに気づいた男性がわたしを見上げるようにして首を傾げる。
どきん、と胸が鳴った。
「えっ、あっ、いいえ。では、わたしはこれで失礼します……!」
わたしは慌てて頭を下げると、急いで館内から出ていった。
あまりにも鼓動が速くなりすぎて堪えられないと思ったから。熱い、頬が。男性を見てこんな風になったの、久しぶりだ。
早歩きで進んでいき、屋根付きの通路の途中で立ち止まって図書館の方を振り返った。
柊也さん、だっけ。すごくかっこいい人だったな……。
わたしは騒ぐ胸に左手を持っていき、ぎゅっと握った。