腹黒司書の甘い誘惑
「よいしょっと」

五冊ほどまとめて持ち、椅子から降りて本を置く。

そして再び椅子に上がり、腕を伸ばした。

数冊持ったところで、そろそろ椅子を動かさないと届かなくなる位置になった。

あと一冊だけ取って降りよう、と片腕を思い切り伸ばしたけれど、自分が思っていた以上に本との距離があったらしい。
触れるけれど掴めず、もっとぐっと腕を伸ばした。

でもやはり無理らしい。
諦めておとなしく椅子を動かそう。

そう思って力を抜いた瞬間、ぐらり、体勢が崩れた。

「わあっ……!」

まるでスローモーションを再生しているかのようだった。

落ちる! と思って何かにつかまろうと宙で手が泳ぎ、棚の縁を掴もうとしたけど間に合わず、持っていた本がバサバサッと床に落ちて……。

もうダメだ、と目を閉じた瞬間。

「っ……危ない!」

ドンッ、と体に衝撃があったけれど、痛くはなかった。

あれ……と、目を開けてみると、わたしのウエストに腕がまきついている。

そして背中に感じる温もり。

「椅子から落ちるなんて究極のバカだな……」

ゆっくりと首を動かして後ろを見てみると、眉根を寄せる柊也さんと目が合った。
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