腹黒司書の甘い誘惑
そう言われて、自分が柊也さんによりかかって半分ほど体重をかけていることに気づいた。

「おおお、重くてすみませんでしたね!」

わたしは慌てて重心を戻した。
すると腰にまわった腕の力も緩む。

やだ、もう、変なことを考えていた自分が恥ずかしい。

胸の音、静まって!
顔の赤みも直って!

「まだ顔赤いけど?」

必死で気持ちを静めていたのに、柊也さんが覗くように見てきた。

何故かまだ腰に腕がある。そして意地悪な微笑み。

もっと頬が熱くなって、どうしようもなかった。

恥ずかしい。バカにされたくない。
だけど速い鼓動は静かにならない。
激しい高鳴りに堪えるためにわたしは拳を握りしめた。

「おーい、なんか大きな音したけど大丈夫?」

声がしてはっと顔を上げると、本棚の横からひょこっと笹本先生が顔をだしてこちらを見ている。

ぎゃあっ! と、心の中で叫んだわたしは慌てて柊也さんから離れた。

しかし、ばっちりくっついているところを見た笹本先生はにやりと口許を緩めた。

「あれれ、ごめんね。取り込み中だった?」

「とっ……取り込みってなんですか、なんですか! い、椅子から落ちそうになったのを助けてもらっただけです……!」

「ああ、そうなの? だから抱きしめられてたのか」

「抱っ……」

からかうような笹本先生の言葉に、わたしは倒れてしまいそうだった。
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