腹黒司書の甘い誘惑
抱きしめられていたように見えていたのかと想像すると、恥ずかしくて消えてしまいたくなる。

言葉が出ず、真っ赤な顔で口をぱくぱくさせているわたしを、笹本先生は面白そうに笑った。

一方柊也さんは溜め息をひとつ。

「鈍臭そうだから高い位置の棚には気をつけろと言いにきたら案の定だもんな」

「ど、鈍臭そうって……」

なんなんですか、と不満たっぷりの視線を柊也さんへ送ると、彼は唇の端を上げて見てきて、絶対わたしのことを馬鹿にしているなと思った。

「向こうに脚立があるから使えば」

流れるように目尻で見てきた柊也さんはそう言って歩きだし、彼の背中がわたしに向く。

それをムッとした表情で追っていたら笹本先生と目が合って、慌てて顔を元に戻した。

笹本先生は先程から面白そうに頬を緩める。

「倉橋さんって見ていて楽しいね」

「た、楽しい……?」

くすくす笑った笹本先生も背を向け、この場から離れていった。
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