腹黒司書の甘い誘惑
***


その後、事務室に戻ったわたしはいつも通り仕事をはじめた。
美鈴さんに「柊也くんかっこよかったでしょ?」と聞かれて、わたしはどきりとしながら控えめに頷いておいた。

図書館を出てからずっと彼のことが頭から離れないくらいかっこいいと思いました、とは言えない。
勤務時間が終わるまでいつもの事務作業をこなしながら、空いた時間で深呼吸をしてこっそり胸の高鳴りを抑えていた。

まさか一目惚れというやつだろうか。そんなことを思ったら、ぽうっと頬が熱くなった。うう……。

自宅まで二駅程度だが、うっかり降り忘れてしまいそうになるほどあの人のことを頭に浮かべていた。

「ふぅー……」

1LDKの自宅に帰宅して、鞄をテーブルの側に置くとソファーにドサッと腰を下ろして脱力する。
今日は変に疲れた。騒ぐ鼓動を隠していたからだろう。

背もたれに背中をくっつけてしまったら、テーブルに置いてあるテレビのリモコンに手を伸ばすことができなくなり、わたしはぼうっと前を見ていた。
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