あるワケないじゃん、そんな恋。
羽田が静かなのが気になった。

昨日のクマさんから聞いた話も頭にあって、余計なまでに緊張する。



どうしよう…。

羽田が別れるって言い出したら……




「菅野…」

「な、何⁉」


前から聞こえた声にビクついた。

振り返った羽田は優しい顔をしていて、改めてドキッとさせられた。



「ほらっ」


差し出された手を見つめる。
握ってもいいのか分からずに、じぃっと眺めてしまった。


「何やってんだよ。手ぇ貸せよ」


いつもと変わらない言い方なのに、なんだか優しい気がする。

心の中に羽田に対して後ろめたい気持ちがあるせいか、もしくは羽田自身がホントに優しく言ってるのか…。



「ほら!もうっ、早く!!」


痺れを切らしたように握りしめられた。
手袋をしていない羽田の手は、ひんやりと冷たい。


「お前の手袋あったけーな。自分で編んだのか?」


「………うん」


答えに詰まる質問でもないのに、直ぐには答えれなかった。

さっきの羽田の言葉が気になる。


……これ以上、聞かずにいるのなんて苦しい。

どんな意味合いでもいいから、聞いてみないと……。




「羽田……」

「んっ?」


意を決したのに、振り向く顔を長くは見れなかった。
直ぐに目線を逸らし、先に見えてきた公園の方を指差した。



「あそこ行こう。いつもあそこで運動させるの…」



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