おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
*
9時ちょうどに香苗と別れて、駅に向かう。
一緒に改札を抜けて、上りと下りのホームに分かれた。
階段を降りて上りのホームにつくと、向こうのホームから香苗が小さく手を振っている。
私もおなじように振りかえした。
すぐに下りの電車が来て、香苗はその車両に姿を消した。
私はベンチに座って電車を待つ。
5分ほど経ってからホームにすべりこんできた電車に、乗客たちに流されて吸い込まれるように乗り込んだ。
電車は空いていた。
でも、座ったら眠ってしまいそうだったので、あえてドアにもたれて立つ。
ガラスの向こうを流れていくたくさんの建物たち。
ガラス張りのオフィスビル。
おしゃれな高層マンション。
二階建てのアパート。
ちいさいけれどあたたかい一軒家。
これらのすべてに人がいて、そこで働いていたり、そこに住んでいたりするのだと思うと、不思議な気がする。
一年前に引っ越した街の駅に着いた。
降りなきゃ………そう思っているのに、なぜだか足がうごかない。
ドアが開いた。
続々と人々が降りていく。
でも、私は動けなかった。
ドアが閉まる。
私はぼんやりとそれを見送った。