おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―







9時ちょうどに香苗と別れて、駅に向かう。



一緒に改札を抜けて、上りと下りのホームに分かれた。



階段を降りて上りのホームにつくと、向こうのホームから香苗が小さく手を振っている。


私もおなじように振りかえした。



すぐに下りの電車が来て、香苗はその車両に姿を消した。



私はベンチに座って電車を待つ。


5分ほど経ってからホームにすべりこんできた電車に、乗客たちに流されて吸い込まれるように乗り込んだ。



電車は空いていた。


でも、座ったら眠ってしまいそうだったので、あえてドアにもたれて立つ。



ガラスの向こうを流れていくたくさんの建物たち。


ガラス張りのオフィスビル。

おしゃれな高層マンション。

二階建てのアパート。

ちいさいけれどあたたかい一軒家。


これらのすべてに人がいて、そこで働いていたり、そこに住んでいたりするのだと思うと、不思議な気がする。



一年前に引っ越した街の駅に着いた。


降りなきゃ………そう思っているのに、なぜだか足がうごかない。




ドアが開いた。


続々と人々が降りていく。



でも、私は動けなかった。



ドアが閉まる。


私はぼんやりとそれを見送った。




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